ポジティブ心理学の知見を教育に応用し、子ども達の学ぶ力の育成に加え、
一人ひとりの日々の充実感や幸せを支援する教育的アプローチです。
具体的には、ポジティブ心理学の枠組みを支える「強み」や「レジリエンス」研究や、
ウェルビーイングに関するPERMA-Hモデルを基盤として、
各要因をカリキュラムに導入するなど教育現場で応用されています。
PERMA-Hモデルには
Positive Emotion 「ポジティブ感情」
Engagement 「エンゲージメント」
Relationships 「他者との関係」
Meaning 「人生の意義·意味」
Accomplishment 「達成」
Health 「心身の健康」
が構成要素として含まれ、それぞれを豊かに育むことが
個人のウェルビーイング(よりよいあり方や成長)に寄与するとされています。
ポジティブ教育では、子どもたち一人一人の学ぶ力(学力)を育むことに加え、自分らしく、幸せに生きていく力を培うことを目標にしています。
また、子どもを取り囲む教員や保護者、クラスや学校という集団や組織の「強み」の活用やウェルビーイングも大切にしています。
国際ポジティブ教育ネットワーク(International Positive Education Network)のシンボルマークには、ポジティブ教育が重視する子どもたちの知的発達(Academics)に加え、人格形成とウェルビーイング(character & well-being)が二重らせんを形成する様子が表現されています。
https://www.ipen-network.com/
ポジティブ教育では科学的に実証された概念や手法を取り入れ、豊かで確かな教育実践を目指します。
また、教育活動を通してさらに検証していくことで、実践的な知恵を蓄積していくことも重視しています。国内外の教育現場での実践は学会等での発表、論文や書籍など様々な形で発信され、教育施策等に反映されているものもあります。
ポジティブ教育では、子どもたちが自分らしさを開花させ、伸びやかに成長することを支える「育成」の視点と、逆境や困難に出会っても立ち直る力を培う「予防」の視点を大切にしています。
これは、困難や逆境、それに伴うネガティブな感情や経験は誰にでも起こり得るという現実理解を基盤にしています。
例えば、大変なことに直面した時にそこから回復できる力や自分なりの乗り越え方(レジリエンス)を養っておくことが「予防」につながり、有事に備えた避難訓練のように意識的に教育に取り入れることが重要です。
一方で、子ども達が様々な気持ちに気がつき、それらと上手に付き合っていく方法や、周囲との関係性を尊重しながら自分らしさや強みを活用する方法、よりよい人間関係を自分らしく構築する方法を培っていくことは「育成」につながり、自律した幸せな人生を歩んでいくために欠かせません。これら2つの観点を柱として、ポジティブ教育のカリキュラムの中などに反映されています。
ポジティブ教育を導入することで得られた様々な結果が
これまでの実践研究で報告されています。
導入に際しては、個々の現場の状況を的確に把握し、教員向けトレーニングや勉強会を実施したり、現行のカリキュラムや時間割との調整を丁寧に行うことが成功のカギとなりますが、先行事例などを参考に日本でも今後多くの実践が蓄積されることが期待されます。
近年、日本では、いじめや不登校問題に加え、不安や抑うつなどメンタルヘルス問題の低年齢化も深刻化しており、子どもたちの精神的健康を取り巻く状況は社会にとっても重要な課題となっています。
そのような中、教育現場では子ども達の「困難を乗り越える力」の育成へのニーズが叫ばれ、レジリエンス教育への期待が高まっています。
また、多様な人々と共生し、豊かに生きていくために重要な自分らしさや生きる力を伸ばす「強み」を育て、自尊感情や自己効力感などを育むウェルビーイング教育の実践にもますます注目が集まっています。
当協会では、2013年より欧州のポジティブ心理学のリーダー的存在であるイローナ・ボニウェル博士から直接ポジティブ教育のプログラムの指導を受け、日本の文化や社会の文脈に合う形に独自にローカライズを重ねながら、日本におけるポジティブ教育の研究や実践を積み重ねて参りました。
次世代を担う子どもたちが、自分らしく、幸せにたくましく成長することを願い、これからも活動を続けていきます。