日本ポジティブ教育協会は
世界のポジティブ教育の実践者、研究者とつながり、
情報交換や意見交換を行っております。
このページでは、世界のポジティブ教育についての情報をお伝えします。
ポジティブ教育に熱意と関心を寄せる世界各国の学校関係者(教員、親、生徒)、実践家、研究者、大学、企業や政府が一緒になり2014年に設立された団体です。ポジティブ心理学の父と呼ばれるマーティン・セリグマン博士や、当協会の顧問であるイローナ・ボニウェル博士が主要メンバーの一員となっています。
2016年以降,2年に一度の国際会議が開催され、それぞれの実践活動や研究の成果を発表し、交流と研鑽を深める機会となっています。
海外ではポジティブ教育の導入が多様な形で進められています。行政単位で地域の学校に取り入れているところ、学校全体として取り組んでいるところ、また教師の裁量で独自のアプローチを試みているところなど、現場の状況に応じて様々が工夫がなされています。
オーストラリア
2007年に米・ペンシルベニア大学のマーティン・セリグマン教授と彼の研究チームをアメリカから招き、独自のポジティブ教育(初等科から高等科までを含む包括的なホールスクールアプローチWhole School Approach)を開発する下記のような一大プロジェクトを実施しました。
・200名の全教員とスタッフにポジティブ心理学、強み、そしてレジリエンスについてのトレーニングを実施
・ポジティブ心理学領域の著名な学者を講師に招き、直接学ぶ
・ポジティブ教育専門の責任者(director)を任命
・ポジティブ心理学をベースにした全校(K12:3~18歳)のカリキュラムを開発
ポジティブ教育実践の先駆的存在として、当初から地域の学校などの見学や研修を積極的に受け入れてきた当校は、各国から視察などの希望が相次いだこともあり、2014年にThe Institute of positive educationを設立。
さらなるポジティブ教育の実践、普及と研究に努め、これまで国内外の600校以上、合計10,000名を超える教育関係者に研修を行ってきました。現在は、生徒たちを教育における対等なパートナーとして位置付け、積極的に彼らの声を反映させる取り組みを行っています。
The Institute of positive education, Geelong Grammar School
https://www.ggs.vic.edu.au/instituteイギリス
2007年にマンチェスター、サウスタインサイド、ハートフォードシャーの3つの自治体が域内の22の学校の7年生(11歳:日本の中学1年生にあたる学年)約2000名を対象に18時間のレジリエンスプログラムを導入しました。
以降、さらに多くの学校がレジリエンスプログラム(UKRP)を導入し、2018年現在で数千人の教員がレジリエンス教育のトレーニングを受け、さらにそれぞれの生徒たちにレジリエンス教育を実践しています。2007年から参加した最初のコホート(第一世代)の実施期間中と2年後の追跡調査を経て得られたデータ分析から、以下の結果が得られました。
・短期的に生徒のメンタルヘルス、学校出席、学業(英語・数学)成績などが向上した。
・生徒を小グループ(15名以下)に分け、週1回×18週で実施をすると隔週実施よりも効果的である。
・スタート時点でメンタルヘルス問題を呈していたり、成績が到達目標に達していたなかった生徒たちの方がプログラムによる効果が大きかった。
取り組みと結果の詳細レポートは下記から確認できます。
https://assets.publishing.service.gov.uk/DFE-RR097.pdfインド
ポジティブ教育の真価はインドのような低所得国においてこそ、発揮されるのかもしれません。Steve Leventhal氏を筆頭とする熱意溢れるCorStoneチームは、2008年以降、インドのスラムの中で暮らし、貧困の連鎖の中で生きる最下層の女子のためにポジティブ心理学に基づくレジリエンスや強みの教育を展開し、彼女たちが自らの権利や価値に気づき、逆境の中でもその力を発揮するための支援を行っています。
例えば、インドの中でも最も貧しい地域の一つであるBihar(ビハール)の女の子たちは、95%が高校までの教育を全うすることができず、82%が10代で結婚させられ、54%が自らの生活に関わる重要事項の決定に参加を許してもらえない環境に生きています。このような環境の中、本団体は他の教育支援団体や行政の協力も得てGirls First プロジェクトを展開しています。
プログラム参加者は社会の周辺に追いやられてきた12~16歳の女の子たちで、多くは自分の家庭の中で初めて学校に通った存在としてプログラムから様々なことを学んでいます。
さらに、インドの他の地域でも女子や青年を対象とした支援プログラム、低カースト子女救済のための寄宿舎学校、さらにケニアの青年支援のためのプログラムなど、世界の若者支援に取り組んでいます。これらのプログラムに参加した若者は2018年までに10万人に上るということです。
また、これらのプログラム参加者たちの健康や意識、レジリエンス、ウェルビーイングへのインパクトは無作為化対照試験(RCT)デザインによる長期縦断研究により、実証的に検討されています。
2019年にオーストラリア(メルボルン)で行われた国際ポジティブ心理学会で、CorStoneのSteve Leventhal氏は最も顕著な貢献をしたポジティブ心理学の実践家として推薦を受け、表彰されました。
本団体に関する詳細はHPから確認できます。
https://corstone.org/Attention : 上記で紹介したレジリエンス教育は、弊協会が実施するレジリエンスプログラムと同一のプログラムではありません。